設計コンセプト
この場所に生まれ育った奥様とご両親、建て替え前から同居していた旦那様と2人の子供、3世帯6人家族の住まいの建て替えである。建て替え以前は、使われなくなった倉庫や蚕小屋も母屋に併設されており、配置やプランの影響で、採光の面では居間の窓もほとんど機能していなかったが、必要なものだけを建築し、母屋の南北に庭をつくれるスペースを残して母屋を配置することができた。
屋根はシンプルなほど美しく機能的である。最も屋根らしいカタチが切妻だと感じている。軒は低く出すことで、機能的に外壁を雨風から守り、心理的にも外と内との中間領域として機能する。
また、平面をコンパクトにすること、屋根勾配なりの気積を絞ることにより、家族の距離感が遠くならないよう、屋根を大きく見せる切妻とすることにより、新たに建て替える住宅でありながら、以前からこの場所にあったかのような落ち着いた佇まいとなるよう配慮した。少なくとも自分がつくる住宅は、住い手の内面的な心の風景を作り出す場であるよう考えてつくりたいし、その心の風景は家族に共有できるモノであって欲しい。素朴で風景に馴染む素材と形態の選定を心掛けた。抽象的な意味でも具象的な意味でも、風景を後退させない家として設計した住宅である。