設計コンセプト
30代のご夫婦と女の子2人の4人家族の住宅で、敷地は出雲の中心部からは少し離れている。のどかな土地ではあるが、いくつかの住宅が集まった造成地でした。
設計にあたり思い描いたのは、山陰の気候風土に「無防備な」庭やデッキテラスが気持ちよく使えるだろうか。眺めるだけの庭になりはしないだろうか。洗濯物を干すためだけの場所にならないだろうか。シンプルなだけの空間、シンプルなだけのデザインは本当に住みやすいのだろうか。その家族の生活をデザインできているのか。家族が住み始めた時のほうが良い家になるのだろうか。プライバシーを守りながらも隣近所との関係を作れるだろうか。今まで設計してきた家は明るすぎなかったか。植栽ってやっぱり良いなあ、等々。
それらを考慮しながら、東側の土地が団地内の共用空地だったためそちら向きの配置とし、片流れの折れ屋根で家を包み込みました。共用空地〜庭〜大きな軒下〜内部空間〜LDK〜水廻りと単純なレイヤーで空間を構成して、奥行きのある内部空間としました。大きな軒下は雨や夏の日射しから外部空間を守り気持ちの良い居場所をつくってくれます。あるいはその大きな軒や植栽、内部空間がLDKのプライバシーを生み出しながらも近隣や共用空地との適度なつながりをつくっています。内部は陰影のある少し暗めの空間で、どちらかというと少し物静かで控え目なご家族にはしっくりくるのではないかと思っています。ディティールは場所場所であえて少しずつ変化させる事が微妙な空間の豊かさにつながればと考え、素材も同様に全体のバランスを考えながら普段よりは多めに使ってみました。平面図だけ見ると内部土間があることくらいが特徴に思える住宅ですが、実物はもう少しだけ豊かさを感じてもらえるものになったのではと思っています。