設計コンセプト
敷地は福山駅(城)と芦田川の中間地点の街にある。息子夫婦が2世帯として住むために、築48年の住宅に新たな居住空間を挿入するリフォームであった。また、改修直前は居住空間であったが、以前は酒屋として利用していた空間を住宅の用途として再構成する必要があった。既存建築は南側前面が道路に面しているため、南側の部屋はカーテンや葦簀(よしず)で閉鎖的になっており、玄関は利用されていない状況があったので新たな住宅として再構成した。要因として周辺環境との関係性を構成するための「格子」。南北への動線を容易に確保する事と柔軟な住空間のための「露路」を新旧2世帯を調合するかのように計画した。「露路」は隣地との境の空間であり、千鳥張のラワン合板や既存開口部を利用した吹抜けから太陽光や風を入れ、外部を感じる路地空間とした。太陽光と風は隣接するLDKと2階室1に及び環境を改善し、パッシブな装置として機能している。冬には南側玄関から北側勝手口まで直通しているので、閉じる事により日照の少ない東側のペリメーターゾーン対策ともなり一体的に利用する事で拡張性がある空間ともなる。LDKからは、露路の壁面を画面として切り取り、ギャラリーや床の間のような利用方法も提案。作品をやわらかな光が照らす。壁や天井のラワン合板は、千鳥張の無着色の塗装としコラージュ的な空間とした。
「格子」は、酒屋であった店舗のためファサードは和のデザインがされていた。木製見切、銅板の鎧張り瓦庇の一文字葺き。これを覆うように1階部分に切子格子を設置。外部には街並みの調和を形成し、内部には光と風を取り入れながら懸念事項の視線を調整し、リズミカルで軽快なデザインとした。