設計コンセプト
クライアントは港町の観光地である鞆を移住地として希望しており、2階から海が眺められる本物件を壊して建てるのではなく、直して住むことを提案しました。しかし構造が不安定であったり、海風の通り道を塞いだりと、幾度の増築によって住環境が悪化しており、外観も不揃いで地域の景観に馴染まないものでした。そこで、4つの方針のもと改修を行いました。
@減築と耐震補強による空間の再構築
無理な増築によって不安定だった箇所を減築し、平屋建て部分を残しました。既存の構造要素である土壁を活かし、さらに耐震壁を増やして、耐震補強を行いました。
A鞆の景観イメージに順応する外観改修
外観は鞆の古い町並みに合うよう、仰々しかった玄関の入母屋を撤去し、代わりに庇を取り付けて軒のラインを揃えました。プライバシーの確保のための玄関の格子戸、窓の出格子、庭の大和塀も景観の調和に寄与しています。
B省エネルギー設備の導入とパッシブソーラー
減築をすることで、ダイニングに光を取り込める西側の土間が生まれました。リビングには大和壁で囲われた中庭をつくり、通りからの視線を遮って小さなプライベート空間を生みだしています。この2つの庭によって光を取り込みながら風が通り抜ける空間を生みだしました。
C立地や風土を楽しめる暮らしの場づくり
倉庫とガレージの屋上にはデッキをつくり、海や花火を眺められるようにしました。アウトドアが趣味のクライアントのために大きな倉庫もつくっています。また、元々あるものをなるべく使いたいという希望から、木製建具や竿縁天井をそのまま利用し、床板や瓦を再利用しています。