設計コンセプト
備前市の南西。岡山市へと続く鉄道や幹線道路からも、そう遠くない場所ながら、瀬戸内らしい緩やかな小山に囲われ、古い家屋の間を縫うように続く旧街道沿いに面した、昔ながらの風情が残る良好な住環境に位置していた築20年の住宅のリフォーム。この地域では多く見られる典型的な和風住宅に、2世帯で住まわれていた御家族。
主だった改修は1階部分で、外観にはほとんど手を加えていませんが、玄関と縁側のアルミサッシだけは撤去し、耐震壁を付け加え、木製建具で一新。既存のポーチを広く延長する形で、既存屋根下に新たな庇屋根を差し込んで、テラスと物干しスペースを新設。新たな庇屋根を支える柱は、やや縦長平面のものとし、ランダムな動きのある配置で、奥行きのある佇まいを創出。
改修前のプランでは、玄関から入った左手の好位置に「立派な3和室+広縁」。いまや地方においても、冠婚葬祭などは家の外で行われることが増え、親戚など大勢が一度に家に集まる機会に重宝していたこの様な立派なスペースの使用頻度は少なくなりました。この御家庭でも「立派な3和室+広縁」は、洗濯干しスペースや、子供のおもちゃ置場等として使われていました。その好条件なスペースの価値を、もう一度、最大限有効なものとして活かす事をメインに、建物全体の計画を進めました。
最も好条件な位置に配置されていた「和室+広縁」をリビングダイニングとして改修。北東角にあったキッチンを、リビングダイニングに面した家の中心に据え、新たな生活の中心となったリビングダイニングは、その南側にテラスと庭を望める、家族みんなで囲える大きなローテーブルのある畳敷きの床座スペースに改修。また、パントリーやユーティリティといった機能スペースの充実の為の改修や以前LDKだったスペースをトイレや浴室などの水廻りに近接した親世帯寝室として改修。耐震性強化の改修や断熱性強化の改修…などなど機能性や耐久性の向上に努めながらも、この場所の魅力や恵まれた周辺環境との繋がりを、以前にも増して享受できるようなリフォームとなる事を心掛けました。