設計コンセプト
敷地は広島市の山あいの中腹に区画された住宅地であり、敷地の廻りがすべて住宅に囲まれているが、密集して建っている印象はない。
建主はプライバシーは確保しながらも閉鎖的すぎないこと、3人の子供たちの遊び場となる広い庭、さらに風の通り抜ける快適な住環境を望まれた。
【3つの分棟形式と隙間の関係性】
まず敷地に3つの棟をつくり、南棟はパブリックスペース、北棟はプライベートスペース、東棟はガレージとした。南棟は前面に大きく庭をとり、軒を2mほど伸ばして軒先を低く抑えることによって、適度なプライバシーを確保することができた。軒先の深さによる採光量の減少は、棟の隙間から差し込む直射光を間接光に変換し、室内に穏やかな光を採り込むことによって調整した。さらに棟の隙間は風の通り道となり、南庭と中庭の南北方向、中庭と玄関土間の東西方向、さらに玄関土間と吹抜空間の上下方向に風の流れをつくることによって、室内の空気循環を促している。
【内外を超えた開放性】
ダイニングの座卓に腰をかけて、庭で遊ぶ子供たちの様子を見る。庭から2階スタディコーナーの子供たちの様子を見上げてみる。またスタディーコーナー、外のバルコニー1、寝室2をまとめて子供室として使う。この内外を超えた日常生活の様子が、この住宅の豊かな開放性といえるのではないかと思う。