設計コンセプト
この住宅に大きなコンセプトはありませんでした。はじめから決めていた事と言えば、既存の梁を見せないことと、天井の高さを低くすることだけでした。
独立して初めての仕事は、ずっと話をしていました。この家族と一緒の時間を共に過ごすことで、この家族の空気に入ろうと思っていました。そして、この家族が好きになりました。
僕は全体のイメージを頭に持ちながら、それを基に、床の色や壁の色、照明器具などの希望を聞き、一緒に選択していきました。僕はわからないところがあれば、この家族に相談し、判断し、時には委ねたりしました。このミックス具合が上手くいったのかもしれません。
一番大きな決断は、はじめの意に反し、縁側部分の天井を上げて梁を見せたことです。天井下地が張り終わるころ、天井高さが低いと不安に思われたこの家族が、一部分でも天井を高く上がらないかと考えたからです。このときの決断が、この家族と僕に大きな意味を与えてくれた気がします。
このように、僕が全てを選んで決めたわけではありません。最終決断はしましたが、今でもこの家族と作ったと思っています。
工事の最後に、この家族から言われた言葉があります。それは、今でも僕の頭の中に残り続けています。