設計コンセプト
中心部からほど近い住宅地に夫婦、子供一人、祖母の2世帯住宅を計画したもので、初期の段階から敷地の狭さもあって柱状の建物が出来上がることが想像できた。また敷地の前面はポンプ場となっており、視覚的にも広範囲から抜けができていることから、前面に大きな開口を持ってくることはできるだけ避けたかった。しかし単純に柱状の建物に2世帯が住むとなると、各層ごとで生活領域が完結してしまいがちである。そこで1〜3層を貫く抜けをつくり、各層での存在感を感じることができるようにした。抜けにはそれぞれずらしながらデッキを設け、居室の面積の狭さを補う。またその抜けにより前面に中間領域が設けられ、そこからの採光、通風を確保できるつくりとした。これにより、外部に向けて熱負荷の大きい開口を設けなくて済むことから、熱効率の良い内部空間をつくることができ、さらに防犯性も同時に確保することができた。
建築面積が大きく取れないものの、あえて大きな抜けをつくることにより、家庭内のつながりも内部と外部の関係もうまく解決できたと実感している。