設計コンセプト
敷地は、形状や大きさもバラバラな建物が乱雑に建ち並び、隣家がすぐ傍まで迫る住宅密集地の中に位置し、南北二面の道路に接している。このスペースのない密集地の中で、多くの家は道路側に大きな開口を設けそこから採光や通風を確保しようとしているが、皆同様にプライバシーを確保するためにカーテン等の目隠しをして生活をされている。それならば、この密集した中にも空いたスペース「隙間」をつくればそこから光や風を外部からの視線を気にせず取り込めるのではないかと考えた。
そこで、この敷地の最大の個性である二面道路を活かし、京都の町家のような「通り庭」をつくることにより、密集した外部環境に空いたスペース「隙間」を生むことを考えた。この「通り庭」は、住まいへ入るアプローチであり、1階へ光を導く縁側であり、子供達の遊ぶ中庭であり、使い方によって様々な表情をもつ空間となる。
平面計画としては、密集地で暗くなりがちな1階は、明るい「通り庭」に面するように片廊下式のホールを配置し、各居室はそのホールから明るさを受け取る計画とした。2階は、引き戸を開け放せば水周りも含めて、全てのスペースが繋がる大きなワンスペースとなる間取りとし、採光や通風を全てのスペースで確保できるよう考慮した。
雑然とした住宅密集地の中で、この「通り庭」が外と内の境界を緩やかに繋げ、窮屈な環境に明かりとゆとりを住まい手にもたらすと共に、この住宅街自体のゆとりにもなってほしいという思いを込めて計画した。