設計コンセプト
「家の作りやうは夏を旨とすべし」
夏の日差しを楽しむ、夏のための家です。
「深い、深い、軒が欲しい。それは包まれるような安心感を生みだす。」御施主様のこの言葉から計画はスタートしました。まず建物形状は、敷地に対して南側に開いたコの字型とし、その中央部分にリビングをレイアウトしました。
リビング・ダイニング・キッチンで40帖程の広さを確保し、落ち着いた印象を出すために、天井には濃色のウォールナットを使用しています。その天井からひと続きの軒が、南側にある中庭に向けて2m伸び、同時に石張りのテラスが広がっています。十分に外部環境を取り込んだリビングは、両袖がビルトインガレージのバックヤードや焼杉の外壁で囲まれており、プライベートなくつろぎの空間となっています。
軒は、正面ファサード側にも廻り込み、コンクリート打放しの外壁から、2枚の木製の軒が跳ね出ている外観を形作っており、内外ともに、夏の日差しの陰影を感じられる住宅となっています。
「落ち着き感のある樹木を庭に植えたい」という御施主様のご希望から植栽にもこだわり、樹冠の大きなシンボルツリーを建物着工の前から植樹し、またお子様の年齢と同じ樹齢のしだれ桜を植えるなど、思い入れの深い庭ができあがりました。
吉田兼好は徒然草で「家の作りやうは夏を旨とすべし」と記しましたが、近年のガラスを多用した明る過ぎる建築よりも、このような住宅の方が日本の気候には適していると考えます。