設計コンセプト
本物件は120年前に移築された田の字型古民家の改修設計。数年前に葺き替えられた瓦屋根を残すという条件の中、その下に5つの箱を挿入し、それ以外の空間をパブリックスペースと捉えることで、居住の快適性を確保する、建物の趣を残す、立地を生かす、構造補強を施す、の4点の要件を満たすよう設計した。
箱は、プライベートな空間と構造補強を兼ねている。個室・水廻り・納戸を動線よく配置することで、共働き子育て世代のクライアントの要望を叶えた。個室利用の箱には、断熱性の高いペアサッシを採用し気密性も高め、其々で効率の良い空調管理ができるようにしている。
パブリックスペースは、南斜面の上に建ち周辺が山々に囲まれている立地を生かして、各方位に開き、季節や時間帯に応じて自然の光や風が入るだけでなく、周辺の木々を内部に取り込むようにガラス屋根やガラス戸を設けている。南側の眺望を生かしたリビングは、床の高さを押え庭と連続して利用。ダイニングキッチンの上部は、元々あった厨子二階の床を取り除き、既存の梁が見える吹抜けとした。上部に設けた開口部から建物の奥まで陽が差し込み、日中電気を使わなくても過ごせる明るい空間となっている。