設計コンセプト
敷地は住宅地の端に位置し、山裾に沿って南北に細長い形状をしている。北側半分は市街化調整区域に指定され計画を制約する一方で、東側に迫る緑は、魅力的でありながらも、剥き出しの自然の厳しさを漂わせており、長い間畑として利用されていた。
「山」と「人」それぞれの営みが隣り合うこの場所において、時間の流れ、変化のスピードに着目し、今後もこのままありつづけるであろう原生林が生活のよりどころとなるのではと考えた。
そこで、山側へ最大限に開放し、人の力では到底不可能な自然のつくりだす豊かな空間性を取り入れることでさまざまな変化や表情の訪れる住まいを構想した。
建物は影のような控えめな佇まいとなるよう平屋とし、山裾の境界に沿って諸機能を一列に並べ、どこからでも山と接することができるように計画した。プランを「く」の字に折ることで、中と外の視線の重なりを生み出し、空間に奥行きを与えている。
道路から1mほど上がった地盤に置かれた建物をくぐるように入っていくと、緑のパノラマが展開する。
柱や方立てなど境界を感じさせる要素を一切無くすことで、風景とのシームレスな一体感をつくりだしている。