設計コンセプト
敷地は芦田川の西岸に位置し、福山の市街地を見下ろす古い造成地の中の角地です。30年ほど更地のままで、立ち枯れした松に覆われていました。山を切り開いた雛壇状の団地にありながらさりげなくプライバシーを守り、広葉樹に覆われた裏山の景観とも対話ができる住宅をめざしました。敷地の余白には自生していたモチノキを残し、地域の植生にならった雑木を植えています。裏山から飛来する種子から今後も木々が育ち、時間をかけて木立ちの中にとけ込んでいく計画です。外観はすべて杉板張りで、遠景からは木々と同化する色としました。また、住宅棟と呼応するように、同じ板幅の杉板を目透かし張りにした軽快なガレージを配置しています。一つの敷地の中に二棟で一対となるボリュームを構成しつつ、二棟の間には曲面を描く両面目透かし張りの板塀を設けて、木に抱かれたような領域感を生み出しました。
住宅棟は1階のパブリックゾーンを中庭のボイドが貫き、それを取り囲むように2階の各プライベートルームを配置しました。中庭はフィジカルに作用する通気や採光の効果に加えて、自然や家族の気配を伝えるメンタル面における役割も担っています。
木立ちの家では、設備や断熱性能の物理的仕様に加えて、中庭がもたらす感覚的な効果、敷地の将来像という時間軸も含めて、エコを総合的に捉えることを心がけて計画しました。