設計コンセプト
広島の中心にほど近い住宅地である。準防火地域で周囲の住宅が近接した環境であり、特に南側には隣地いっぱいに3階建がせまって建っていた。それぞれの住宅の狭間からの陽光や風の導き、プライバシーへの考慮、駐車スペース3台の確保、そして、万が一の災害時の防火対策などを同時に解決する住宅のかたちを模索した。
【台形をスライドさせたかたち】全体は二つの台形平面が南北にずれるかたちで向かい合っている。それぞれが「茶の間」や「ラウンジ・ライブラリー」などの公的な空間、個室・サニタリー・納戸などの私的な空間に分かれ、中央に位置する玄関・階段などのジャンクション部で連結されている。
【スライドで生まれた空間】台形平面のずれによって隣地との間に生まれる小さな空間が、それぞれ奥庭・西庭・来客用駐車スペースとなり、近隣との関係を融和し、狭間からの光と風を室内に導いている。
【防火要素】木造の構造躯体の外側に大きな空気層のある外襞をつくり、台形の平面を東西から大きく覆った。風雨から木部を保護すると同時に、準防火地域における防火壁として機能する。その結果、袖壁や格子など多くの襞を持った建築となり、隣家からの視線をさりげなくかわしながら、奥行きのあるたたずまいを醸し出している。