設計コンセプト
広島市の都心、間口5.6メートルの細長い平坦地である。その敷地は中高層建物に囲まれ、南側には昼夜開校される高校の校舎が幅6メートルほどの道を挟んで建っている。場所にもたらされる陽光と自然風とを逃さず受け止め、建物の奥へ、上へ下へと導く。そのことで、都会に在りながらもナチュラルな要素に満ち、建物全体が循環し呼吸するような住まいを考えた。車2台の並列駐車を叶える7メートルのキャンティレバー、そこから約20メートルにわたって敷地後方へと続く伸びやかな空間を傾斜する屋根が包み込む。その傾斜面は圧迫感なく校舎からの視線をカットし、外に対しては威圧感を与えることなく室内のプライバシーを守っていく。屋根の南に傾く角度は季節ごとの日照を精査し決定した。そのことで、夏には太陽光線を絞り込んで熱の拡散を抑制し、角度が生じる冬場の太陽光は効率よく受け止め建物深部まで届けていく。その効果で、建物のコア部や敷地奥側においても日中は照明要らずのエコロジカルな環境が整っている。内部空間では、光・風・熱など環境要素の特性を丁寧に読み取って、気積や風圧の操作、風道の確保などを建築にプログラムし、エコキュートや床暖房、省エネ型エアコンといった確実な機器を最も効果的な位置に組み込んだ。そうした自然事象と人工機能とのハイブリッドといえる住宅は、都会から家族を守り抜く強さと、省エネと省CO2といった地球環境の負荷も軽減し得る細やかさを備えている。