設計コンセプト
中心市街地に建つ40年前の鉄骨造のビルである。両親が商売をしていた頃に建てられたもので1階駐車スペースは広く、階高の高い3階建てのビルであった。この建物に若夫婦と子供2人が住んでおり、子供部屋を新しくするにあたり新築若しくはリノベーションの相談があった。図面のない既存建物の調査をする中で、リノベーションを選択する方法を提案した。それはフレーム構造であったため自由度が高いことと、解体費用を出来るだけ耐震補強することへシフトすることで求められていた床面積を確保できることが大きかった。向かいに建つビルの高さからの採光や通風などを考慮し2・3階フロアを大規模にリノベーションする一方、1階や塔屋などは費用をかけないようなコストコントロールを含めた計画とした。既存建物は開口部が少なく、階層ごとの上下階のつながりが希薄であったため、今回、2階をプラットフォームとした外部空間を中心に1室空間のような構成とした。既存の枠組みを活かしながら、採光や通風そして日射をコントロールする外皮から連なるレイヤー状のフレームによって省エネ・省CO2を実現している。そして、ライフスタイルのニーズに応答できる新たな居場所の快適性と耐震補強に伴う安全・安心を確保した。今回のリノベーションによって周辺にある40年前の建築群に対して、解体/新築ではない新たな価値の生成を期待した。それは、今までの消費フロー型から持続可能なストック型社会にむけてのひとつのキッカケである。子供たちの喜ぶ笑顔は両親から、若夫婦そして子供たちへと時間を紡いでいくように思えた。