設計コンセプト
岡山と広島の県境の里山に建つ、若夫婦のための住宅である。施主夫婦は市街のアパートを出て、自然豊かなこの里山に新居を望んだ。市街地居住の利便性はなくとも、自然の豊かさを享受できる生活を望まれていた。里山の風景と現代のライフスタイルの寄り添い方が、計画の主題となった。外部に対しておおらかに開きながらも、地域コミュニティと程よい距離感を保てる心地よいバランスを、住まい手が調整できる住まいを目指した。
建物は敷地の形状に応じて異なる床レベルを持つ、トンネル状の寝室棟と、庇を大きく張り出したガラス張りの居間棟から構成されている。寝室棟のボリュームが道路から居間への視線を遮り、より外部の自然へおおらかに開かれた生活を可能にすると同時に、日中の直射日光の居間への貫入を大きな庇とともに和らげ、室内の熱負荷を軽減している。強い夏の西日は、敷地北西側の木立がガードしてくれる。家の内側だけで快適性を追求するのではなく、自然に寄り添いながら現代の住宅設備の利便性をバランスよく享受できるプランニングを行った。