設計コンセプト
敷地は出雲大社近くの新しい住宅地の一画で、道路を挟んだ東側には3階建ての団地もあり少々落ち着かない環境でした。
外観は軒高を低く抑えた家型で、極力ボリューム感を抑え、グレーに着色した板塀は、施主様の「プライバシーを守りたい」という要望に答えて、中庭とLDKの大開口を周囲の視線から守っています。中庭の中央には外部物置と大きな軒下を確保して使い勝手を良くしています。
内部空間は玄関から居間へと続く土間空間を配置して、「木塀〜中庭〜土間〜居間」と奥行きのある空間をつくりだし、その土間に薪ストーブを設置して、吹抜けのあるこの家の冬場の室内環境を快適なものにしています。また、あえて1階中央に300oほど床を下げたクローク室のボリューム(上部は中2階のフリースペース)を置くことで、DKと居間を緩やかに区切りながらも2階を含めた家全体の一体感を確保し、回遊性を生み出しています。
施主様の仕事の関係で、この地域で造られたいくつかの「味のある」タイルを支給されたり、知り合いの左官職人さんにどこかしらの壁を塗ってもらいたいとの希望もありました。モダンな家づくりをイメージされているのとは逆に、提示されたそれらのものは、時間や人の手を感じさせるものであったので、全体のバランスをとることに苦心しましたが、完成した時から既に″少しだけ″時間の流れや手作りの跡を感じてもらえる家になった気がしています。