設計コンセプト
敷地は良質な住宅地、60代の建て主が、亡くなられたご主人から受け継がれた洋蘭や植物とともに暮らす家。老いを支えるライフスタイルがテーマ。建て主の培ってきた交流を活かすため、地域の仲間が集まりやすいサロン的な雰囲気をもつ半公共的な空間を構想した。ゆったりとしたアプローチと土間エントランス、高い天井をサンルームに開かれたリビングなどがそれである。
植物の手入れが、日々の活動に自然に取り込まれるよう、温室の向かい側の場所に、植物のサンルームを配置。サンルームは、リビングやテラス、浴室と連続し、生活の核となっている。この場所は、鑑賞、手入れ、話題づくりなどの植物を介した交流の一助けにもなっている。環境、設備的にも、サンルームは中心となり、各室が呼吸する計画とした。温室とサンルームをヒートチューブで接続し、エネルギーの補完と風の流れをコントロールしている。
地域由来の土と技術を使用した土壁を内外に使用。厚い土壁に囲まれた寝室は、調湿性のある呼吸する壁面を実現、安心感のある静謐(せいひつ)な場所となっている。ファサードの土塀は地域の色をもち、通りに親しみのある表情をもたらしている。リビングルームとサンルームの上部に小さな開口部を設け、木漏れ日のような光が落ちる中、刻々と変化する小さな光に、室内にいながら季節や時間を感じることができる。
風土と技術、生活のリズムと応答する建築は、創発的、活動的なライフスタイルを誘発し、実現している。