設計コンセプト
鳥取県境港市は1年を通じて比較的風が強く、山間部に比べると少ないながらも冬季には積雪のある地域である。計画地の南側に既存の前栽と向かいに広がる竹林、北側に道路を挟んで神社の駐車場、西側に畑が広がり、東側は雑草が生い茂る空き地があった。
冬季の厳しい自然環境と近隣からのプライバシー確保、要求されるスペースの数を考慮し、平屋の中に屋外スペースを含む6×5=30の部屋をグリッド状に配置する空間構成とした。
各部屋に必要な天井高と外部への自然な雨水勾配も確保するため、グリッドの交点レベルを調整した。また周辺環境との関係性によって、外壁が折れ曲がりながら適切な距離をとり、外周部の軒の高さを低くおさえている。
この外周部に配置した外室により形成された中間領域は、夏の強い日射しを遮るとともに冬の積雪から住環境を守り、厳しい自然環境をコントロールする装置になる。同時に近隣からのプライバシー確保にも寄与する。内部と外部をゆるやかにつなぐインターフェースとして機能する外室によって、建物内外の境界があいまいになり、内外の関係性がより強くなる。
そして、30の部屋は構造に必要な壁を残して穿たれた開口によってつながり、各部屋の用途とつながりを考慮して、木製家具のような薄い壁で開口部の大きさを調整している。各部屋は、個室として使えることはもちろん、2〜4の部屋をつなげて使うことができ、大勢の来客時にも対応できる。また家族それぞれの部屋を固定せずに、家具レイアウトを変えるようにそれぞれの部屋を入れ替えることで、家族の成長や変化にフレキシブルに対応できる空間計画とした。