第20回 2016年 新築住宅部門 最優秀賞
第20回 入賞作品 作品一覧
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【作品名】 shrimp
  • 設計/UID
  • 施工/ホーム 株式会社
  • 竣工日/2014年5月25日
[建物概要]
  • 建設地/広島県福山市
  • 敷地面積/155.40m2
  • 延床面積/141.80m2
  • 構造・規模/鉄筋コンクリート造(一部木造)2階建
[設備面の特記]
  • 厨房機器
    ・ガスコンロ
  • 給湯機器
    ・ガス給湯器
  • 冷暖房機器
    ・エアコン
  • その他
    ・ディスポーザー

設計コンセプト

都市の中に溶け込む新たな立体的コートハウス、福山市中心市街地の一画に建つ住宅の計画である。
北側前面道路に接する敷地は南北に細長く折れ曲がり、敷地周囲は住宅とビルによって囲われている。このような敷地の中においても日常の豊かなひとときを奏でていくための空や水・土・陽光・風、そして動植物とのインタラクティブな関係性が生まれる市中山居のような環境を考えた。
計画としては周辺外部から遮蔽されたような関係性ではなく、もっと人が関わりを持つ範囲を広げていけるような関係性を目指してコートハウス的な要素を立体的に内部に取り込んだ。南北に延びる敷地に対して1つの大きなボリュームで捉えるのではなく、3つのボリュームに分節し、ボリュームの隙間から滲みこむ外部環境とのつながりを期待した。
具体的には東西の隣地に対して地面から立ち上がる6枚のRC独立片持ち壁により3つの殻を形成した。その間に生まれた大きながらんどうと内外殻が混じり合うことで生成されるスリット。そこに、分節された殻を跨がっていくような異なるフロアレべルを持つ自由な木造スラブによって、ランドスケープと絡まりながらそれぞれの居場所をつくりだしている。そして、大きさの異なる殻は複雑に内外部空間を紡ぎ出しながら、陽光や風が人の滞在場所を抜けていく。
甲殻類のような殻と殻との隙間と断続的な内部空間によって分棟形式のようでありながら領域が規定されない広がりを獲得している。それは、中心市街地にいながら現代の山居のような環境を生み出している。
都市部の住宅街において敷地周辺の状況を丁寧に読み取っていきながら近隣とのほどよい領域の関係性をつくり出すことこそ、何気ない日常のひとときを豊かなものにさせるエッセンスだと思っている。

平面図 断面図

審査委員講評

周辺の環境から防御的に用いた鉄筋コンクリート造の重厚な質感と、内部の木質系を主な材料とする柔らかく暖かい空間構成の対比が見事です。内部に持ち込んだ岩、土、植物などの自然素材と、木材、ガラスなどで構成した空間の輪郭が一体となり、光や風などの作用が加わることで、絶妙な住空間が生まれています。あたかも舞台のセットを見るような完成度を感じる住まいです。

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