設計コンセプト
多くの建築では「窓は窓、壁は壁」として別々のものをつなぎ合わせる様に作られてきた。しかし、窓であり壁でもあり柱でもあるような新しい建築のあり方も可能だと考えた。「建築は、もっと自由になれる。」そんな建築の提案である。
のどかな田園風景の広がる敷地に、風景に溶け込むような透明な建築が求められた。まず敷地に小さな丘を作り、その丘の上に家具や生活品がぱらぱらと置かれ、自然の中に日常生活が入り込んで混ざり合うような風景を提案している。丘の上には薄い屋根だけが存在し、その下で生活が営まれることで住まいになっていく場所を作った。
屋根を支えるのは、透明な40oのアクリル壁である。壁と窓が一体となったような存在であるため、視線を遮られることなく周辺環境とつながることができる。高低差によって生活の環境を分けながら、エキスパンドメタルで緩やかに囲うことで、重なりによって風景との濃度が変わる。あたかも建築の内部に霧がかかり、そこに生活に必要なものが置かれていくさまをイメージした。
また、庇はアクリルの開口部の高さと同程度に出すことで、雪や日射から建物を守りながら温熱環境をコントロールし、自然に屋根を架けただけの空間が生活に豊かさを与えている。
屋根だけで建築化された場所。そこには多様なものが混ざり合った豊かな風景が存在する。環境と建築の関係性、建築自身の関係性、分けられたものが混ざり合っていく先に、建築はもっと自由になれる。