設計コンセプト
この建物は隣接する母屋の燃料となる薪や木材をストックするために建てられたもので、そこに離れ的な和室と鶏舎が併設されていた。伝統的な民家のような立派な柱や梁はなく、住まいにするには躊躇するような建物であった。
リノベーションは既存の建物の潜在的な可能性を見い出すことが重要である。2階の天井が低いロフト1(サブリビング)、さらに天井の低いロフト2(ゲストの寝室)は再生前の小屋裏空間を生かしたもので、リノベーションならではの楽しさがあり、内包性の強い不思議な心地良さがある。吹抜のある居間食堂から階段を上って進むほど天井が低く小さな空間になる構成で、建物に奥行き感を出している。これは恣意的な操作によるものではなく、この建物が持っていた小屋裏空間の可能性を見出した結果である。
敷地は南に田んぼや畑が広がり、北東には石垣が並んでいる。主室からはこの特徴的な景色を切り取った。居間食堂は畑を望む大きな開口から石垣の見える地窓へと、視線が心地良い風とともに抜ける。
2階は吹抜からロフト1に続く連続窓からパノラマの田園風景を望むことができる。多種多様な開口部がこの住まいの居住性・演出性を高めている。
性能面では既存の土壁をできる限り残し、外側に断熱材を入れることで土壁の蓄熱効果による室内環境の安定化をはかった。主室の開口部には必要に応じて障子を併設することで断熱・日射遮蔽性能を向上させた。