設計コンセプト
福山市郊外の鞆の浦へと至る幹線道路沿いに建つこの住宅は、ご家族3人と建主の姉との「二世帯住宅」と建主の「アトリエ」という機能を備えている。建主からの要望は、まちに対して開いた暮らしができることであった。
敷地の北側に通り土間をもつL形の住宅を配置し、南北にできた余白を北庭と南庭の2つの庭とすることで、通り土間から南北の庭、そしてまちへと繋がるような「まちに開いた暮らし」ができる瀬戸内の自然と共生する住まいを目指した。
瀬戸内の温暖な気候を利用し、夏は南面に設けた深い庇で日差しを遮り、通り土間南北の引き戸を全開放することで、自然な風が通り抜ける住まいとなる。冬は南面に設けた窓から差し込む日射熱を熱容量の大きなモルタルの床に蓄熱させて暖房効果を得ることで、室内環境の安定化を図っている。
内部はそれぞれの機能が程よい距離感を保つため、吹抜けをもつ通り土間を住まいの中央に配置し、それぞれの場所を独立させながらも建具や障子の開閉により家族の気配を感じられる緩やかに繋がった空間とした。
まちに開いた暮らしをするということは、建築や庭を含めた風景を地域の人達と共有するということである。この場所が四季の変化やその成長を地域で楽しむ原風景になればと願っている。