設計コンセプト
敷地が面する旧街道は萩往還と呼ばれ、今も昔も人や車が活発に行き交う通りである。南側隣地には、近い将来建物が建つことが予想された。敷地への円滑な車の出入りと将来に渡っての南からの採光を確保するため、四角い敷地に対して四角い建物を斜めに配置し、また、人と車の往来からプライバシーを守るため、パブリックスペースの開口部に対して目隠しとなる塀を設けた。
施主の要望は、各々が趣味を持ちてんでに過ごしながら、一緒にいる暖かさを感じることができる家である。そこで、距離を置いて配置した個室をひとつの煙突で繋ぎ、現れた空隙をパブリックスペースとした。各個室には独立感があるが、出入口はいずれもパブリックスペースに繋がる。パブリックスペースは個室でとり囲まれる形態となるため、外気に接する面積が小さくなり空調負荷が抑えられる。また、煙突が壁で囲まれることの閉塞感を拭うと同時に通風による快適性をもたらす。
快適性はこの場を家族の営みの中心に強く位置づけ、家族が集まって過ごす習慣を生む。結果、空調エリアが狭まり、年間を通じてエネルギー消費を減らすことへと繋がっていく。坪庭を囲む目隠し塀は夜間の開口部開放を促す仕掛け、通風を促す煙突は個室のドアを解放したくなる仕掛けでもある。