設計コンセプト
建築地は山陰の米子市、国立公園大山の麓である。1年を通して雨が多いこの地域は、冬は冷たい北西風が吹きつけ、多雪地域でもある。また西側に対して高台になっているこの敷地は、景色がひらける代わりに強烈な西日を浴びる。
夫婦と子供2人と、新たに同居する奥さまの母親の5人が住む住宅である。適度な家族間のプライバシーを確保しつつ、夜勤のあるクライアントが家族の雑音を気にせず睡眠できる環境を実現するために、各部屋を分棟形式としてほどよい距離感を保っている。
この分棟形式の各「イエ」の上に、通年の雨、冬の雪や北西風、夏の西日に対するバッファーとして地面から生える切妻の折板屋根をかけた。同時にこの大屋根は近隣住宅からのプライバシー確保にも貢献する。また、大屋根と「イエ」のすきまから入り込む自然光により、昼間は照明に頼ることなく明るい室内を実現する。また、大きく南側と西側に張出した大屋根により、太陽高度の高い夏期は直射日光を遮り、通風を確保することで涼しく快適な住空間となる。
各「イエ」のすきまを風が通り抜けるだけでなく、最大天井高さ7.5Mのリビングでは最上部の開口や温度センサー換気扇から排熱することで夏場の室内環境を快適にしている。太陽高度の低い冬期は直射日光をリビングに取り込み、モルタル床に蓄熱することでダイレクトゲインを実現する。
冬期の夜に床暖房を補助的に使うことで、できるだけ機械設備に頼らない快適な住空間を可能としている。