設計コンセプト
敷地は瀬戸内海の山の斜面を宅地造成した雛壇状の中にあり、北向きに眺望が開け道路面から1m上がった敷地環境と建築の新たな在り方を考えた。それは敷地の自然環境と建築が同時に存在するような関係であり、分節することのできない環境という総体の中のひとつの風景となりえるような建築の在り方である。
今回、段上の地表とそれらを取巻いている近隣の塀やフェンス、そして斜面に沿って広がる住宅群、遠くの山々などの外部環境をそのまま受け入れながら住まう形式を考えた。建築を壁によって土地と分節するのではなく外部の延長としての内部、土地と分節されることのない竪穴式住居のような地表をつなぐ建築原理である。
具体的には地表面を掘り窪めた円形状のフロアなど6タイプのフロアレヴェルを中央にあるコンクリートのシリンダーコアによってつないでいくものである。そして、地表から僅かに浮遊するハコを支持する複数の枝のような華奢な柱によって多様なワンルーム空間を創出する。
地表をつなぐということによって環境と建築の新たな広がりのある関係性が生成され、身体感覚として領域が規定されない空間になることが、風景の中に建築が存在する自然な関係であるように思う。