設計コンセプト
断熱性においては、エコポイント制度もあり、高性能グラスウールと高断熱スタイロフォーム、窓はLow-Eペアガラスを採用。浴室のシャワー水栓は手元クリック付きでお湯を無駄に使わないようにし、スペースごとの引戸で空間を区切れるようにすることで空調ロスを低減し、省エネルギーに配慮した。
お子さんが小さいことやオープンなキッチンのため、IHクッキングヒーターの安全性と清潔さを重視した。筋交いで十分な壁耐力を確保した上で、外壁に面した内部壁を構造用合板で仕上げることで、より強固な構造とした。採光・通風性においては、通常の住宅ほど方位に左右されない開口計画としており、南面には必要以上の開口を設けず、北面・東面にはプライバシーの条件も良好なため、積極的に開口をとっている。
住宅設計の要望の多くに広々としたLDKというものがあるが、今回はそれとは反対のものだった。「広すぎるのは落ち着かないし、寒そう。でも昔ながらの完全に部屋で分かれているのもいや」という思いに対して出した答えが「スキップフロア」であった。6畳と4.5畳をベースに床下倉庫とロフトまで入れると計9つのレベルの床によって空間が螺旋状に繋がりつつ区切られている。
住宅のどこにいても背後には壁があり、コーナーがある。狭いというよりも守られている安心感を感じることができる。様々な床段差や数段の階段はいつのまにか腰掛ける場所になっており、家族やお客さまは無意識のうちに相手との距離や目線の高さで自分の居心地の良い場所、しっくり感じる場所に収まっていくようだ。わずか24.5坪の空間が分節され、その空間がスキップフロアにより、多様で立体的な関係性を持つことで数字以上の広がりを生み出している。どことなく昔の長屋のようなほっとする家、子供が走り回っているのが似合う家、散らかっていても受け止めてくれる家。そんな「家族の生活をデザイン」できた住宅である。