第14回 2010年 新築部門 優秀賞
第14回 入賞作品 作品一覧
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【作品名】 高須の家
■ 設計/春日琢磨建築設計事務所
■ 施工/野村建設株式会社
■ 竣工日/平成22年7月9日
[建物概要]
■ 建設地/広島県広島市
■ 敷地面積/137.87m2
■ 建築面積/39.75m2
■ 延床面積/60.45m2
■ 構造・規模/木造 2階建
[設備面の特記]
■ 厨房機器
・IHクッキングヒーター
■ 給湯機器
・エコキュート
■ 冷暖房機器
・エアコン
■ その他設備
・浴室暖房乾燥機

設計コンセプト
広島市内の山裾を走るバイパス沿いに建つ、夫婦と子供1人のための住居である。敷地は急な坂道に寄り添う雛段状の造成地にあり、4mを超す石積みの基壇を持つ。この地は、古くは南方に瀬戸内海を望む優雅な別荘地として閑静な環境を形成していたが、現在は目の前を通るバイパスの騒音壁がその眺望を遮り、敷地は小さく分割され、マンションや住宅が密集した環境となっている。施主の要望は、「2台分の駐車スペースと庭」、「みんなが明るく楽しく生活できる空間」、「月に数度、仏壇を中心とした大人数の集まりに対応」、「玄関と隣接した衣装室」、そして、「予算が非常に限られている」であった。がけ条例などの諸条件とコストバランスを考慮し、敷地北側に2台分の駐車スペース、南側にささやかな庭、他は既存の石垣を避け杭が打てる最小の空間を残し、4間×5間の距形の平面計画とした。その限られた面積の中に、各空間をコンパクトかつ相互的に関係性を持つ構成とすることで、豊かな住環境をつくり出すことを考えた。平面のほぼ半分を庭に面した大きな吹抜けとし、畳の間・食堂・台所を連続して配置した。間口いっぱいに設けた開口部は、庭との繋がりを強め、互いの狭さを補完する。畳の間は、1階レベルより400mm高くし、上階と近づけることによって、上下階の空間の親密さを強めた。このレベル差を食堂では座面としても利用し、吹抜け全体を普段はリビング、人が集まった時は仏事の空間、仏事が終わった後にはそのまま宴会の空間へと、かつての民家にあった包容力ある空間としている。玄関から洗面・浴室・さらに食堂につながる1階北側の衣装室と、天井高や色彩による変化を持たせた2階の諸室は、吹抜けを介して他の部屋と互いに補完し合いながら成り立たせている。生活の中心の畳の間とそれを取り巻く諸室は、視界の抜けや互いが補いながら成立するという相互的な空間構成により、狭いながらも広がりと奥行きの感じられる豊かな住環境をつくり出した。
平面図
寸 評
住宅は敷地や予算の制約など、施主と作者の戦いと言えると思います。何かをあきらめて、何かを得ることで成立せざるを得ないのですが、この作品には、しつこくあきらめない意志を感じることができます。畳の間からの階段や玄関横の衣装室等も作者の譲れない美意識とあきらめない心から生まれた新鮮な解決だと思われます。
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