錦織 亮雄 (建築家・株式会社新広島設計 代表取締役会長)
このコンテストの審査をするとき、住むということ、或いは、棲むと言うことについて考えます。
電化住宅という制約はありますが、人の住みかとしての正しさを評価して、このコンテストの健全さを確立できたらと願うからです。
「たしかなるべきは家なり、そこに育むたしかな生のひろがりに、世たしかなるべし。」が私の願いです。
人間は自然の中に生きています。
人間は時間のつながりの中に生きています。
人間は人と共に社会の中に生きています。
人間は自己発現の中に生きています。
住みかはこれら全ての起点です。
今の時代、住宅づくりに一定の水準を確保する技術や手法は定着してきましたが、その反動として均質化や標準化の大波が押し寄せているようです。
今回のコンテストも、ほとんどの作品は住宅として一定の水準に達したものでしたが「生の起点」としての感銘を覚えるものが大変少ないと感じました。

西川 加禰 (社)広島県建築士会「高齢者住宅と福祉のまちづくり研究会」代表
(前・広島工業大学助教授)
このコンテストはすでに家族が住んでいる完成後の住宅が対象となっております。
住み手と造り手とがうまくかみ合って良い作品が出来るわけですが、今年は家族の積極的な住要求と入居後の住まい心地などが受けて取れるような作品が見当たらず、造る側のコンセプトの方が目立ちました。
また、施主の高齢化がみられ定年退職後の快適な住宅を求めるものが増えましたが、リフォ−ム部門でも同じ傾向がありました。
とりわけリフォ−ムでは、古民家の良き価値観を見極めながら、施主の期待に応えられた暖かい心と技術力でもって、現代に再生されたことに敬意を表したいと思います。
今年は新築部門で最優秀賞に該当する作品がなかったのは残念でしたが、それだけ全体レベルが高くなってきたからだと云えます。
優秀賞では、「西条中央の家」は吹き抜けのあるリビングとその先のウッドデッキが、高台に立地する眺望のすばらしい効果を高めております。「T邸新築工事」は、定年退職後の収入減を考慮すると、快適な室内環境を維持しながら入居後のランニングコストを如何に押さえるかに取り組まれた熱意が伝わってきました。「下古志の家」は将来のお母様との同居を考えた、親子の生活領域の取られ方がうまいですね。「船穂町営住宅水筒団地」は公共自治体としての電化住宅の取り組み意欲に敬意を表して奨励賞としました。

宮野鼻治彦 (プロデューサー・生活デザイン研究所 代表取締役 )
あたりまえのことですが、住まいはあくまでも「生活のための住まい」であって、「住まいのための生活」であってはなりません。
したがって、自分にとっての「良い住まい」を造ろうと思うのであれば、まず「いかに生きようとするのか」を自分自身や家族に問いかけ、「自分達らしい生活デザイン」をトコトン議論し明確にした上で、外観や間取り・設備の検討に入っていく必要があるはずです。
しかしながら、私たち日本人の住まいづくりは、ややもすると見た目のイメージやトレンドに流されてしまい、かけがえのない人生の限られた時間を豊かに過ごすためのものというアプローチが曖昧であったり、後回しになってしまう傾向が根強く残っているように思われます。
このコンテストでは、審査にあたっての最優先基準を、「住まい手の生活デザイン」へのこだわりと理解・共有の深さ、そしてそこで求めようとする豊かさの実現に「電化」がどのように活かされているか、というポイントに置いています。
そうした視点において、新築住宅部門の「西条中央の家」「T邸新築工事」「下古志の家」、リフォーム部門の「K邸改築工事」「平井の家」の5つの作品は、頭ひとつ抜きん出ていたように思います。
ただ、今年の応募作品全体を通して感じたことですが、こじんまりと品良く、まとまったレベルを突き抜ける良い意味での「我の強い作品」が無かったのが、とても残念でした。来年に期待したいと思います。