錦織 亮雄 (建築家・株式会社新広島設計 代表取締役会長)
 戸建部門や集合住宅の部門では、「電化住宅建築作品コンテスト」という今回の名称の中に、このコンテストの意味が盛り込まれていると考えて審査に当たりました。このコンテストは、住宅の電化コンテストではなく、あくまでも工夫ある電気の使い方をともなった住宅作品の総合的な価値を競うものであり、その意味でこの名称は、「電化」「住宅」「建築作品」と読まれるべきで、電化のあり方、住宅のあり方、建築作品のあり方、の三点が良くバランスしていることを大切に評価したいと考えました。このバランスの中心をなすのは、当然のことながら「住宅」です。「電化」という方法も、住宅としての機能や魅力を造り出すためのものであり、建築としての評価も当然住宅としての総合性能を前提としているものです。
 応募作品の中には、「電化住宅」に比較的特化したものが多くみられました。それらは、電化による省エネや安全性という点でそれぞれ良く工夫されていて、新しい時代に向かっての住宅設備のあり方を示していますが、その多くは、住宅設備としての電化住宅であり、建築としての総合的な魅力にとぼしいものでした。戸建て部門で最優秀の「石本 邸」は、さりげない住宅でありながら充分に個性的であり、電化、省エネについてもあくまでも力みなくこなされており、住宅としての総合的な意味での「親しい魅力」が高く評価できるものでした。
 集合住宅部門の「ドーミー庚午」は、電化と環境共生の工夫を重ねながら建築の合理性がよく追求されており、目的を持った施設としてのバランスの良い考え方や解決法が優れていたことが評価されました。
 PSのアイデア部門では、切実な解決法の提案と、切実さをはなれた夢のアイデア提案とに大別 されましたが、入選作は即実行できる素直なアイデアが評価されたものです。この部門では、これからまだまだ沢山のアイデアが生まれてくる予感があります。

西川 加禰 (社)広島県建築士会「高齢者住宅と福祉のまちづくり研究会」代表
(前・広島工業大学助教授)
 電化住宅とは何か、と云う問いに対して、一般的には「給湯や調理、空調を全て電気で賄う住宅」と定義されております。このまま受け取れば生活の全てのエネルギーを電気に頼るような住宅であると解釈されがちです。従来の感覚では電気代は石油など他のエネルギーと比べて高価であるという先入感があり、電気エネルギーの利用を遠慮してきた感があります。しかし、今回の作品コンテストの応募作品をみると、自然環境との共存を重視する住宅のありかたが問われるようになってきて新たな動向がみられます。その主要点は、(1)燃焼のない電気エネルギーは安全で清潔であることが再認識されてきた。(2)省エネルギーが強く推進され住宅の高気密、高断熱が当たり前になってきた。(3)太陽光発電を利用した自然エネルギーの有効利用が普及しつつある。このようなことから、電化住宅とはいかに多く電気設備を取り入れるかではなくて、安全で快適なエネルギーをいかに効率よく生活に取り入れるか、その為の住宅作りの提案が設計者、施工業者共々問われているといえよう。
 こうした視点から、最優秀作となった「石本徹邸」は立地条件を活かして自然エネルギーを太陽光発電により取り入れるなどの工夫をしておられます。施主と工務店が兄弟関係にあることがかえって双方の我がままが出てやりにくい面 もあるが、それをQAのかたちで表現しているところがなかなか面白い。優秀作の「槇岡尚子邸」は施主としての主張をしっかり持っておられ、平面 図をもご自分でつくられた。これを受けて工務店は住み手のおもいをつくる側からしっかりと支えられた相互的結合の成果 と云えます。住宅は出来上がってから住み手によって評価され受け入れられるものです。その意味で施主が主役であり、工務店はその願いを側面 から支える立場であって、決して押しつけるべきではないといえます。
 今回は戸建て住宅、集合住宅、PS設備設計アイデアの3部門にわけて応募作品を求めたが、戸建て住宅に力作が集中し、他の2部門は数、内容ともにいまひとつでこれからに期待したい。

宮野鼻治彦 (プロデューサー・生活デザイン研究所 代表取締役 )
今回のコンテストの最大の意義は、深刻さを増す資源・環境問題等を背景に、我が国の住宅市場が、これ迄のフロー型から良質な社会資本の形成につながるストック型へと転換が迫られる中、安全性・快適性・省エネルギー性に優れた電化住宅の特性をいかした、新しいソフト資産の開発と蓄積、そして共有化にあると言えます。
 その意味から、選考にあたっては、電化を活かした住空間としてのトータルな価値の高さ、という側面 に重点を置いて審査しました。したがって、意匠性等、一般的な建築作品としての要素においては、高いレベルを有していると評価される作品も、残念ながら一部選外となったものもあります。 この点に関しては、応募者の皆様にも是非ご理解いただきたいところです。 部門別に見ると、やはり戸建て住宅部門に力作が集中していました。そこで、錦織・西川両先生とも相談して急拠審査員特別 賞を創設した次第です。
 次回は是非、集合住宅・PS設備設計の両部門にも、多数の優れた作品が寄せられるよう期待したいと思います。